2015年02月26日
今回は食物アレルギーの知識や理解を深めてもらい、子どもや高齢者を食物アレルギー事故から守ることを目的としたフォーラムを開催しました。
一部では講師をお招きし医師、食物アレルギーの子を持つ保護者の立場から各々講演をしていただきました。
二部では講師・救急救命士・中学校教諭を加えてパネルディスカッションが行われました。多くの方に出席頂き、とても有意義な会となりました。
また、参加者から頂きました質問にご講演いただきました萬木先生ならびに浅口市養護教諭より回答をいただき、掲載していますのでご覧ください。
① アナフィラキシーショックの起こりうる学校・幼稚園などに備えるべき救急器材は何ですか。
② アナフィラキシーかどうかを見分けるポイントは?
③ 乳幼児のアレルギー性の喘息に対する対処法は?
当日配布された 独立行政法人 環境再生保存機構の「ここが知りたい小児ぜん息Q&A」P16~21をご参照ください。イラスト入りで流れを書いてあります。
④ 食物アレルギーの除去解除、治療の方法について詳しく知りたいです。(少しずつ食べさせていく治療)
スペースの都合上、すべてを詳しく述べることはできませんので概略のみ記載いたします。
除去解除は、定期的な血液検査や食物負荷テストなどをもとに解除時期または摂取可能量を決めていきます。このような、いわゆる自然に食べられるようになるのを待つ方法では残念ながら小中学生以降になると乳幼児期に比べて除去解除できる確率はぐっと低くなります。一方、症状の出ない一定の量ならたべてもよいという方法は、後にでてくる「緩徐法」と共通する部分もあり、経過によい影響を与えるかもしれません。
少しずつ(増やして)食べさせていく治療は「経口免疫療法」または「経口減感作療法」といわれ、脱感作(=見かけ上は食べられるようになったが、本当は治っていない状態)によるアナフィラキシー対策や耐性獲得(=治った状態)を目的として行う研究段階の治療法です。食べる量を増やしていくスピードによって「急速法(数週間)」と「緩徐法(数か月~数年)」に分けられます。通常、「急速法」は入院中に食物量を増やし、退院後もその量を続けて食べていく方法をとります。入院中や退院後の自宅摂取中にもアナフィラキシーを起こすことが少なくありません。「緩徐法」は外来での増量が中心で、「急速法」に比べて危険性は低いとされていますがやはりアナフィラキシーを起こす可能性はあります。いずれの方法も長期(年単位)にわたって常に食べ続ける必要があります。また、どの程度効果が得られるかもよく分かっていません。
このように「未解決の問題が多く、現時点では一般診療としては推奨されていません。(アナフィラキシーガイドライン)」
参考図書として医療者向けになりますが、
「食べて治す食物アレルギー」 栗原和幸 著 診断と治療社発行
などに比較的わかりやすく書かれています。
⑤ エピペンを処方する人はどれくらい重度の時に処方しますか?
一般に、体重が15kg以上あり、かつ過去にアナフィラキシーを起こしたことがある人や起こす可能性の高いと考えられる人が対象となります。
⑥ 経口免疫療法はどのようにすすめていく治療法ですか?家庭でも少しずつ食べさせるのですか?
④へのコメントをご参照ください。
⑦ アレルギー専門医はこの辺りではどの病院をすすめますか?
日本アレルギー学会のホームページにアレルギー専門医の名簿が公開されていますので参考にしてください。
もしくは担当医やかかりつけの先生にご相談(紹介)していただくのがよいかと思います。
⑧ 緊急時に備えた処方薬 ザジデンなど園又は学校で保管した方がいいですか?
⑨ アトピーとアトピー性皮膚炎との関連性(アレルギーだとアトピーなのか?)
一般的には「アトピー」という言葉は「アレルギー体質」という意味をもちます。
「アレルギー(体質)だとアトピー(性皮膚炎)なのか?」という趣旨だと理解いたしました。アレルギー体質をもっているとぜんそくやアトピー性皮膚炎、花粉症などを発症する確率は高くなりますが、それぞれの環境により発症することもあれば発症しないこともあります。したがって、アレルギー体質があるから湿疹が出たらそれはアトピー性皮膚炎だということには必ずしもなりません。
実はアトピー性皮膚炎は湿疹の出る場所とその経過、症状によって診断しますので、アトピー性皮膚炎と診断された人にはっきりしたアレルギー体質がみられないということもよくあります。ですから、「アレルギー体質があるとアトピー性皮膚炎にはなりやすい」ことにはなりますが「アトピー性皮膚炎があるからアレルギー体質がつよい」とは必ずしもなりません。
⑩ 子どもが3歳の頃にスズメバチに刺されたのですがその子は現在22歳になりました。
もう20年もたちますがやはりまた再度ハチに刺されたら、アナフィラキシーショックを起こすのでしょうか。
一度刺されてからの期間とかは関係ないでしょうか。
「1回刺されたら必ず2回目はアナフィラキシーショックを起こす」わけではありません。血液検査でスズメバチに対するIgE抗体が測定できますので参考にはなります(まずはかかりつけの先生にご相談ください)。
IgE抗体が陰性だとアナフィラキシーを起こす可能性は低いと考えられるものの、必ずしも大丈夫というわけではありません。
短期間に2回刺されるとアナフィラキシーを生じやすいという報告があります。(アナフィラキシーガイドライン P8)
⑪ エピペンは手軽に手に入るものですか?値段はいくらくらいでしょうか?有効期限はありますか?
まず、エピペン処方の対象に該当するかどうかの確認が必要です(質問⑤参照)
エピペンは資格を持った医師しか処方できませんので、事前に医療機関にご確認ください。
値段は保険診療での3割負担として5千円程度のようです。同時に行われる診療内容によって異なる場合がありますので、この点も確認いただいたほうがよいかと思われます。
有効期限は処方されてから約1年が目安です(処方されたエピペンに記載されています)。1本は1回しか使えませんので、使用した場合は新たに処方してもらいます。その場合、有効期限は新たに処方されてから約1年になります。
⑫ 食物アレルギーで、アレルギー物質が少量可や混ざり物がOKという場合、どの程度摂取が可能なのか判断しにくいのですがどう判断すれば良いですか?
卵白を例に挙げます。卵白1gが摂取可能な場合はそれに相当する量が含まれている食品の摂取なら可能という判断が一般的です。「少量」や「つなぎなら可」では量がわかりませんので、あいまいな判断で摂取した際に症状が出る可能性があります。また、加工の程度によってもアレルギー症状を起こす強さが変化しますので、担当医師とよく相談して、食品ごとに量と加工方法をある程度きめて摂取するのが安全だと思います。
給食にこのような対応(食品ごとに量と加工方法をある程度きめて摂取する=部分除去対応)を行うことは複雑になり、誤食事故の危険性が高くなりますので十分な対策が必要です。ガイドラインでは安全確保を優先して給食では完全除去を推奨しています。
⑬ エピペン救急車→病院 どこでも受けていただけるのでしょうか。
ま学校関係者または保護者の方からのご質問と思われます。
これは地域によって事情が異なります。重症度によっては、病院であればどこでも対応できるとは限りませんので、エピペンを処方された際に保護者の方が処方医師とご相談ください。
救急隊がある程度は適切な医療機関を探してくれることと思いますが、ご自分であらかじめ情報(選択枝)を持っておかれたほうが安心です。
学校関係者の方であれば、校医とご相談いただいたうえで、保護者とも合意しておかれるのが確実かと思われます。
⑭ 歯科治療の現場(多くは薬剤が原因かと思われますが)ショックを起こした場合医師より処方を受けていないがエピペンを必要に応じて打ちたいと思うが、その是非・可否について教えていただきたいと思います。
歯科医師の先生からのご質問と思われます。歯科医師も処方・使用医師の登録が可能で、常備することができるようです。詳しくは担当者にお問い合わせください。一般の方からのご質問であれば、かかられている歯科でご相談いただくのがよいかと思われます。
⑮ アナフィラキシーを持つようなアレルギー児がいなくてもエピペンを用意しておいた方がよいのでしょうか?
⑤へのコメントをご参照ください。
教職員からのご質問と判断いたしました。
ご質問の主旨が「誰かがアナフィラキシーを起こした時のために常備薬として置いておいたほうがよいか」ということでしたら、それは「不可能です」。特定児童への処方薬ですので、ルールとして、医師の診断 を受けていない不特定の人に対する使用目的での常備はできません。
保護者の方からのご質問であれば、「主治医と相談の上で処方を判断する」ことになります。(病院までの距離がある場合、念のために持っておくなど)
⑯ アレルギーを持った子どもは多くなってきていると思います。浅口市でもわかりやすく相談にのって欲しいです。どこに相談すればよいですか。
現在の状況で浅口市は小さい子であれば「浅口市健康推進課」小学校以上であれば学校の養護教諭だと思います。
⑰ 浅口市の緊急時マニュアル、連携方法などどのような方法をとっているのか具体的に教えていただきたいです。
別紙【資料4】食物アレルギー・感染症・食中毒(疑)等事故発生時の緊急連絡体制、【資料5】緊急時対応の流れを参照ください。